震災を語る

震災を語る 第6回

第6回「自分を守るのは自分。『防災』も大事ですが『減災』にもどうぞ目を向けてください」 栃尾 正信氏(男性/人と未来防災センター・語り部)

私の体験

震度が「1」大きくなると、そのエネルギーは1.5倍ほどになるという恐怖

22歳のときに交通事故で背骨の神経を損傷して以来、私は車イスで生活をしています。地震に襲われたときは、長田区の自宅で寝ていました。50キロくらいあるテレビがゴーンと1メートルほどズレて、こたつの上からはポットが飛んできました。その衝撃で熱湯はみるみる寝具に広がり、左のお尻から大腿部にかけて火傷を負ってしまったんです。火傷は早い処置が肝心! と、やっとの思いで点けたキャンドルの灯りのもとで、水ぶくれを1時間半ほどかけてめくっていき、真っ赤な患部に消毒液をつけて自ら応急処置を施しました。

落ち着いてあたりを見回すと、台所はもう食器でグッチャグチャ…地震の大きさを物語っていました。地震のエネルギーについては、詳しく知らない方も多いようですが、震度4の場合は4×4で「16」のエネルギー、震度5になると5×5で「25」のエネルギーとなるんですね。阪神・淡路大震災は震度6(一部では震度7を記録)、6×6で「36」というとんでもないエネルギーで襲ってきたことが、この数字からおわかりいただけるかと思います。

消火活動が進まず、燃え広がった長田の町

【写真】栃尾 正信氏

私の暮らす長田の町は、地震による火災が多く発生した地域でした。道路は波打ち、家々が道路側へ倒れて道をふさいでしまって、まともに歩けない状況。消防車もそんな道にはとても入って来られず、消火活動が難しかったんですね。何故、家が道路側へ倒れたのかはご存じですか? 家屋は建築構造上、柱の少ない方へと倒れるんですね。家の裏側にあたる部分にはトイレや台所、お風呂場などが集まっていることが多く、柱の間隔が狭く壁も入っていて頑丈です。だから、表側へ倒れてしまうことが多いんです。道が波打ったり塞がったりしたことで、車イスの自由が利かず、病院へ通うにもずいぶんと苦労しました。

「自助」「減災」-自分を守るのは自分です

健常者、とくに日本人は危機意識が低く、いざという時に慌てるケースが多いようです。身障者の場合、普段の生活をしている時から「自分を守るのは自分」という意識が強くあるんですね。常に情報交換したり、何かあった時の避難所を各自見つけておいたり、横のつながりを非常に大事にしています。テレビで避難所の映像が映った時、身障者をほとんど見かけないのは、あらかじめ見つけておいた被災地域外の病院や施設などへ、ボランティアの方などの協力をいただいて避難していることが多いからなんですよ。

災害に見舞われた時、自分自身や家族で助け合う「自助」、そして隣近所や自治会などで協力する「互助」が、頼れるものの9割を占めるといわれています。警察・消防や自衛隊など「公助」に頼るのではなく、自分たちで何とかしなければならない。そのためにも、日頃の心構えというのは本当に大事になってくると思います。「防災」の対策も大事ですが、「減災」の努力をすることも大事。減災は1人1人の心の中で育つもので、お互いを助け合うことによって被害を少なくできるんですね。

私たちのハートには、傷ができてしまうことがあります。小さい傷は、月日をかければ治すこともできる。でも、震災で亡くなったたくさんの方のハートは、もう元に戻ることはありません。また、なんとか命をつないだ人でも、心の病気にかかってしまい、未だに立ち直ることができない方も大勢います。災害というのは人間そのものを壊し、町を壊し、人の心さえも壊してしまう恐ろしいもの。人ごとではなく、自分の身に明日降りかかるかもしれないという、危機意識をどうぞ持ってください。それが先ほどの「減災」にきっと繋がりますから。

ボランティアは、それぞれにできる範囲のことを自己責任で

【写真】破れたハートの紙

私にとって、健常者として生きてきた人生、そして車イスでの人生に加え、いま語り部として震災にまつわる話をすることも、新たな人生だと思っています。喉元を過ぎたら、どんな大きな災害も忘れられてしまいがち。でも、それではダメですからね。あの震災を体験したからこそお話しできること、身障者の立場から提言したいことなどを、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。これが、私にできる小さなボランティアでもありますから。

話を聞いてくださった方から、感じたことやお礼を綴ったお手紙をいただくことがあります。こんなに嬉しいことはありませんね。これは励みになりますし、語り部をやって良かったなと心底感じます。「ボランティアをやってみたい」そう思っている方がもしいらっしゃったら、どんな小さな手助けでもよいので、まずは手を差しのべてみてください。身障者の場合、「手を貸しましょうか?」と声を掛けていただくだけでもありがたいものです。また、復興ボランティアなどに行かれる方は、飲食料やテントなど必要なものは各自で用意し、自己責任のもとで、どうぞ被災地へ行かれてください。各団体や保険会社などでは「ボランティア保険」というものが用意されていて、1年あたりわずか500円前後でボランティアをする側とされる側を補償してくれます。

阪神・淡路大震災をきっかけに「ボランティア元年」という言葉が生まれました。皆さんの温かい善意の気持ち、どうか大切にしていただきたいと思います。

(インタビュー 2005年2月3日)