◆◆阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センターメールマガジン◆◆

—————————————-◇◇◇ 2017.05.12 発行 Vol.184◇◇◇

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[1]防災日々雑感(第54回)
[2]研究員コラム
[3]研究員の活動報告
[4]運営課からのお知らせ
[5]副センター長より

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*[1]防災日々雑感(第54回)
*長野県 長野建設事務所維持管理課 古越 武彦
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 このコーナーでは、自治体の防災担当職員の方が、日々取り組んでいること、感じてい
ることなどを紹介してもらいます。

 今回のリレーコラムを担当いたします長野県の古越武彦と申します。皆様にはいつも大
変お世話になっております。
 長野県職員となって25年ほどになりますが、今まで、阪神・淡路大震災をはじめ、中越
地震、東日本大震災、長野県北部地震などに関わってまいりました。特に、平成24年度に
は「人と防災未来センター」に研究調査員として派遣され、H24九州北部豪雨災害をはじ
め、東日本大震災での多くの被災地を訪れる機会をいただきました。
 また、長野県へ戻った後、平成26年度には、土砂災害、御嶽山噴火災害、神城断層地震
災害、雪害への災害対応に携わりました。
 どこの被災地でも、その場所に立つと、今までそこにあったであろう幸せな場所や時間、
大切な命が、理不尽にも、一瞬にして無くなってしまったことを肌で感じます。悲しみと
怒り。この感情だけは、いつまでも消えることがありません。決して忘れてはならないと
思っています。
 私には不思議に思うことがあります。被災地では、災害によってどんなに過酷な状況に
なっても、多くの被災者の方がその地に留まろうとすることです。先日、人と防災未来セ
ンターの研究員にお尋ねしたところ、熊本地震のとある被災地では、その町の住民サービ
スを受けられるから、といった理由があるからとお聞きしました。
 それぞれの理由は異なると思いますが、被災地での生活再建を選択される方々にとって、
その地の行政をはじめ、様々な関係機関や大勢の人々の支援が必要になります。被災者だ
けではなく、被災地の市町村にとって、被災者の生活再建は長い戦いになります。我々行
政に携わる者は、被災者の生活再建、被災地の復興までを、常に考える必要があると思っ
ています。
 残念ながら、自然災害の発生を抑える手段はありませんが、被害を軽減することは可能
だと信じています。奪われたものを取り返すことは出来ませんが、生活を再建し、新しい
将来を築くことは可能だと信じています。
 先日、人と防災未来センター長の河田先生から「防災は人づくり、国づくりである」と
いうお話を伺いました。
 私自身、防災部署(危機管理部危機管理防災課)を離れて1年ほど経ちましたが、これ
からも、河田先生の言葉を心に刻み、人と防災未来センターを中心とした有機的な連携の
輪を広げ、子どもたちが少しでも安心できる社会を目指したいと思っております。

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*[2]研究員コラム
* 高田 洋介 主任研究員
* 災害時の遺体対応について計画していますか?
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 大規模災害で発生する遺体への対応について、厚生労働省から出ている「広域火葬計画
の策定」(平成9年11月13日衛企第162号厚生省生活衛生局長通知)に基づいて各
自治体で対応計画を立てていると思いますが、具体的に考えている自治体はどれくらいあ
るでしょうか。今回は遺体への対応について考えたいと思います。
 国際的な論調として、たとえ千人単位で遺体が発生したとしても、遺体が誰であるのか
を識別すべきという流れになっており、それをDVI (Disaster Victim Identification)活
動といいます。DVIには5つの工程があり、1)現場での試料収集、 2)死体からの情報収
集、3)行方不明者の生前情報検索、4)生前と死後データのマッチング、 5)報告会によ
る情報共有です。これらの活動は警察官と医師との連携が必要で、行政だけでは対応計画
を立てることは出来ません。愛知県田原市では南海トラフ巨大地震の大津波を想定し、遺
体安置所を円滑に運営する訓練を3年前から実施しており、警察官のほかに葬儀会社も参
加しています。前述の広域火葬計画は遺体安置所の設置計画については書かれていますが、
DVIについては詳しく書かれておらず、また、火葬が出来ない場合の対応について検討さ
れていないことが課題だと考えます。
 東日本大震災では燃料の不足と火葬場の被災によって、すぐに火葬が出来ない状況があ
りました。他県まで遺体を搬送して火葬する広域火葬も行なわれましたが、1日で火葬で
きる人数は限られており、宮城県山元町では仮埋葬の対応を行なっています。遺体保存に
ドライアイスを用いることは一般的ですが、長期に大量の遺体を保存する方法としては適
していません。仮埋葬が推奨される理由として、地下温度が地表温度よりも低く天然の冷
蔵庫となるからです。しかし仮埋葬といっても、どこでも埋めることが出来るのではなく、
「墓地、埋葬等に関する法律」によって遺体は墓地にしか埋めることが出来ないことにな
っています。そのため、山元町では広い墓地用地を所有する寺と協議をして、仮埋葬用地
を一時借用する形で確保しています。国際赤十字委員会のガイドラインによると、「仮埋
葬する場所は飲み水の水源から最低でも200メートル離し、1.5メートル以上深くしなけれ
ばならない。埋葬の際、個々の遺体には番号をふり、体は40センチメートル間隔で並べる。
埋葬後、それぞれの遺体が埋まっている位置に印を表示する。」としており、山元町の記
録写真を見る限り、そのように実施されておりました。しかし、山元町の事例は偶然にも
寺が墓地として用地を確保していたが、まだ更地だったという条件が揃っていたに過ぎま
せん。つまり広域仮埋葬計画も今後は検討が必要ではないかと考えます。
 大量遺体のDVIには時間を要するため、遺体を防水遺体バックに入れ、長期保存のため
に2~4℃で保管できる設備へ収容することが必要であると前述のガイドラインに記され
ています。その長期保存の案として、民間の保冷貨物コンテナの利用が紹介されており、
1コンテナに最大50体を収容することが出来るとしています。なかなか日本で遺体収容の
ために保冷貨物コンテナを貸してくれる民間会社は無いと思いますが、南海トラフ地震で
の被害を考えると、仮埋葬の用地を確保できない場合の解決策として保冷貨物コンテナも
選択肢として持っておく必要があるのではないかと考えます。

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*[3]研究員の活動報告
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■宇田川真之 研究主幹
 昨年度に参画いたしました内閣府男女共同参画局の「男女共同参画の視点による平成28
年熊本地震対応状況調査」の報告書が公表になりました。
(http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/kumamoto_h28_research.html)「被災自治
体」と「応援自治体」それぞれの観点から整理されています。重要性の認識が広がりつつ
も、発災時の担当者がなすべきことの、より具体化が望まれる分野です。センターの研修
でも該当単元を設けており、今後とも取組んで参りたいと思います。

■高田洋介 主任研究員
 先月、2年に1度開催される世界災害救急医学会がカナダのトロントで開催されました。
災害医療を扱う学会としては数が少なく、40年の歴史があます。60カ国から約900名の参
加者がありました。年々、日本からの発信数も増えてきており、日本からは約40名が参加
しました。今回は、オーストラリアのフリンダース大学と共同研究をおこなっている福祉
避難所に関する国際比較研究における、日本国内でのインタビュー分析結果について報告
してきました。短い発表時間でしたが、国内外から高い関心が寄せられました。日本の赤
十字社は救護班の派遣だけではなく、避難所運営そのものを行なっていってもいいのでは
ないかなどの意見が寄せられました。

■菅野拓 主任研究員
 宮城県名取市の被災者生活再建にかかわる検討に参加しました。東日本大震災発災から
6年が過ぎ、仮設住宅入居者を中心に生活再建は進んでいますが、次の生活や住まいが未
だに定まらない人も多くいらっしゃいます。「災害=自然現象×社会の脆弱性」という式
そのままに、高齢、障害、生活困窮などの平時の課題を抱えていらっしゃる人に、社会的・
経済的ダメージがのしかかり、再建が遅れているように見えます。このような現状をみる
と、被災者一人ひとりに応じて、平時の社会保障と災害救助を組み合わせて生活再建をサ
ポートする取組が重要だと感じます。

■荒木裕子 主任研究員
 (財)芸術工学会主催の減災デザイン&プランニングコンペ2017の審査に参加させてい
ただきました。(http://gensai-design.com/GDPC/index.html)学生から社会人の方まで
幅広い応募があり、書類審査の後、4/16に人防にてプレゼンテーションがありました。審
査員共通で非常に評価が高かった2名の方が最優秀賞となりましたが、どの作品も災害の現
場の課題を独自の視点で捉え、表層的な姿だけでなくシステムにまで踏み込んだ作品もあ
り、大変参考になりました。今年度の展示は5/7まででしたが、来年度も開催されると思い
ますのでぜひご参加いただければと思います。

■坪井塑太郎 主任研究員
 シンガーソングライター、奥華子さんの曲のひとつに「悲しみだけで生きないで」とい
うタイトルがあります。東日本大震災を契機に書かれたこの曲は「がんばれ」ではなく「生
きて」と呼びかけたフレーズがとても印象的な一曲。4月は、発災から一年を迎える熊本地
震の被災自治体や仮設住宅に調査業務で数回訪問する機会がありました。当時の壮絶な経
験も含めて、自治体職員さんや住民の皆さんに率直にお話いただきました。これを正しく
記録に残し、次に備えるための知見や知識として整理し発信をすることが自身の使命…。
 人は他人の痛みを完璧に理解したり、その人の代わりになったりすることはやむを得ず
できないけど、だからこそ日々の自分自身の仕事や、恋人を想うこと、家族を守ることを
精一杯、丁寧に取組むことこそが大切なんだということ。それがきっと、結果的に誰かの
何かになって、社会が繋がっていくんだとおもう。

■中林啓修 主任研究員
 新年度から1月と少しが経ちました。今年度も、「4月1日とは3月32日である」式に、な
かなか年度末で仕事を締めきれなかった中林です。とはいえ、新年度最初の一月は、年初
くらいから温め続けていた年度の研究計画を形にしていく楽しい時間でもあります。今年
度は、昨年度からの継続的なものと同時に、少し野心的なこともしてみたいと考えており
ます。昨年7月配信のメルマガコラムに寄せた「作戦術」について、災害対策本部運営への
応用可能性を本格的に検討していきたいと思っております。どんな成果に繋がるのかはま
だまだこれからな部分がありますが、より適切な本部運営に資する方法論の構築に資する
研究を目指していきたいと考えています。

■本塚智貴 主任研究員
 新年度をむかえています。お世話になった自治体に挨拶に伺うと防災担当者の入れ替わ
りが目立ちます。地域で活動をしていると、「地域と顔の見える関係になった時には次の
部署にうつってしまう。」「あの人となら頑張れると思っていたのに、また新しい人にな
ってしまった。」と行政側からも住民側からも残念という声が漏れ伝わってきます。担当
が変わってしまったらそれで終わりではありませんが、多くの人が息長く継続的に活動す
ることができることが理想です。小・中学校の防災教育もそうですが、なんらかの形での
次のステップを地域で準備し、関係者が息切れすることなくゆるやかに参加できるような
取り組みができればと考えています。

■松川杏寧 主任研究員
 今年の4月は、昨年と違い少し穏やかに迎えられるかと思っていたところ、新しく助成
金を頂けることになった事業の立ち上げに伴い、かなりバタバタした年度開始となりまし
た。この助成金は日本財団から、上級研究員含め人防研究部でいただいているものです。
事業名は「障害者インクルーシブ防災における災害時ケアプランコーディネーター養成」
事業です。災害時要配慮者の個別の避難支援計画をつくるよう、内閣府は推奨しています
が、その作成方法は一般化されたものではなく、個人(福祉系の行政職員やケアマネ・相
談員などの支援者)の技量と知識にゆだねられており、方法も人それぞれになっています。
これを何とか標準化し研修事業の形にすることで、個別避難支援計画の策定が各地で進む
ようにしたいと思います。

■辻岡綾 研究員
 熊本地震(本震)から1年目の4月16日に、熊本県益城町で行われた文化財保護に係るイ
ベントに松川研究員、本塚研究員と一緒に参加をしてきました。その中で、文化財保存等
を担当している教育委員会のご担当者に案内頂き、布田川断層が表出している箇所を視察
して参りました。畑地に露出した断層であるため、横ずれ箇所が草の生え方で視覚的に確
認することができ、地震の大きさを物語るものでした。昔はこの断層を大蛇が通った跡だ
とする「大蛇伝説」というお話で断層の存在を語り継いでいたようです。(現地に行って
案内を聞いていると、確かに蛇が出てもおかしくない雰囲気です。)町ではこれらの痕跡
を後世に引き継いで、防災教育へ活用するために文化財指定に向けて取り組んでおられま
す。地域の過去の災害について、正しく理解することが防災教育の第一歩だということを
改めて認識しました。

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*[4]運営課からのお知らせ
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●【開催中】企画展「地震サイエンス2017~地震の観測・研究 最前線~」
 阪神・淡路大震災以降、地震の観測・研究は進歩を続けており、その成果は広く防災情
報へと応用されつつあります。この企画展では、科学の分野で関係機関がどのようなこと
に取り組んでいるのかを具体的に紹介しています。
 来館者が、はじめて見るものや、はじめて知ることを通じて、地震観測・研究の最前線
を知り、防災や減災の必要性を改めて考える契機としていただければと思います。
<期間>~平成29年7月2日(日)
<会場>西館2階 防災未来ギャラリー(有料ゾーン)

●【新規】南海トラフ巨大地震想定津波高の懸垂幕を設置
 南海トラフ地震に関して、日本で最大の想定津波高(黒潮町34.4m)や津波被害が想定さ
れる府県の府県庁所在地等13市の想定津波高(ともに内閣府「南海トラフの巨大地震モデ
ル検討会」発表(24.3.31)に基づく)を表示した懸垂幕を西館東面外壁及び館内に設置しま
したので、ご来館の際にぜひご覧ください。

●【お知らせ】夜間ライトアップ実施中
 人と防災未来センターでは、西館の夜間ライトアップを実施しています。
 5月の点灯時間は18:45~21:00、月毎に変更するカラーテーマは「菖蒲」です。
 ご来館の際、お近くにお立ち寄りの際には、ぜひライトアップもご覧ください。

●【お知らせ】高校生の入館料が無料になりました
 平成29年4月より高校生の入館料が無料になりました。防災・減災学習の場として、
より多くの学生の皆様のご利用をお待ちしています。

●【お知らせ】毎月17日は入館料無料
 人と防災未来センターは平成29年で開館から15周年を迎えました。阪神・淡路大震
災から20年以上が経過し、記憶の風化が懸念される中、より多くの方々に震災の経験と
教訓に基づいた防災情報と「減災活動の日」への理解を深めるため、平成29年1月から、
毎月17日(休館日の場合は翌日)の入館料が無料となりました。5月の入館無料日は5
月17日(水)です。この機会を活用いただき、より多くの方のご来館をお待ちしていま
す。

問い合わせ先:阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター 観覧案内
TEL(078)262-5050/FAX(078)262-5055

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*[5]副センター長より
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 先日、と言ってもだいぶ前ですが、テレビで京都大学の山極総長の対談を放送していま
した。山極先生といえば学生時代に特別講義を受けたことがあり、サルとヒトの発情期に
ついて解説されていたことが記憶に残っています。なぜこんなことを覚えているのか不思
議ですが、当時は多感だったからか、ただスケベなだけなのか…。
 それはさておき、その対談で山極先生が「事故で片腕を失ったサルの観察をしていたが、
そのサルは落ち込む様子もなく、片腕を失ったという現実を淡々と受け入れ、不便にはな
ったのだろうが普段どおりに生活していた。ヒトなら片腕を失うと絶望して生きていく気
力をなくすかもしれない。ヒトは知能を得たことによって、悲しみが何倍にも大きくなっ
てしまったのではないか。」というような趣旨のことをおっしゃっておられました。
 私たちセンターの取り組む自然災害について考えてみたとき、被災した悲しみ、つらさ
はヒトだからこそ強く感じるものなのかもしれません。サルは災害で家族を失うと悲しみ
はするでしょうが、「あの時ああしていれば助かったのでは」というような後悔、無念さ
は感じないのではないか、悲しみの深さが違う気がします。また、社会が便利になり、科
学が進歩すればするほど自然の力を過小評価し、被災した悲しみが大きくなっているよう
に思えます。
 しかし、見方を変えてみると、知能は悲しみをもたらすだけでなく、危険を予想し、そ
れに対して事前にどう対処すべきかを導いてくれるものでもあります。最悪の事態を想像
して、それが起こる前に準備し、不幸にもその事態が発生したときの悲しみを少しでも小
さくすることも、考える力を得たヒトだからこそできることだと思うのです。
 「人は考える葦である」、ヒトが持ってしまった考える力を最大限活用して、幾度自然
の猛威に打たれようとも、経験を伝承し活かしながら、しなやかに立ち上がれるように、
センターとしても取り組んでいきたいと思います。

 前置きが長くなりました。最近のセンターの動きについて報告いたします。
1、今年度春期の災害対策専門研修を6月6日から23日にかけて実施することとしていま
す。また、研修サポーターとしてDisaster managerの中から48人の方々を登録させていた
だきました。
2、内閣府防災が実施する防災スペシャリスト養成研修事業を今年度も引き続き受託するこ
ととなりました。
3、研究部では今年度の研究活動計画案を作成しており、5月16日の研究方針会議でご議
論いただく予定です。
4、4月25日に開催されたひょうご震災記念21世紀研究機構の「研究戦略センター」発
足記念シンポジウムで、河田センター長が「人と防災未来センターの挑戦」と題してお話を
されました。設立から15年の節目を迎え、センターのさらなる機能充実に向けて取り組ん
でまいります。