◆◆阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センターメールマガジン◆◆

—————————————-◇◇◇ 2017.06.15 発行 Vol.185◇◇◇

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[1]防災日々雑感(第55回)
[2]研究員コラム
[3]研究員の活動報告
[4]運営課からのお知らせ
[5]副センター長より

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*[1]防災日々雑感(第55回)
*河内長野市消防本部予防課 課長補佐 伊藤 圭一
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 このコーナーでは、自治体の防災担当職員の方が、日々取り組んでいること、感じてい
ることなどを紹介してもらいます。

 河内長野市は大阪府の南東端に位置し、東は金剛山地で奈良県、南は和泉山脈で和歌山
県と接しており、府内で 3番目に広い面積の7割は森林で、石川や石見川など河川沿いに
平野が開け、北へ向かって河内平野に続いています。
 本市では、南海トラフや中央構造線における大地震、台風や集中豪雨による河川の氾濫、
渓流における土石流、急傾斜地の崩壊は、一度発生すればその被害は甚大であり、特に現
在においては、今後30年以内に極めて高い確率で発生するとされている東海・東南海・
南海地震や非常に強い揺れをもたらす直下型地震、大規模風水害による大きな被害が懸念
され、その対策が急務になっています。
 昨年9月、大阪府内の土砂法の区域指定が完了し、本市域で災害特別警戒区域が165
4箇所、警戒区域が1679箇所指定されました。
 そのため、指定箇所に入っている避難所等の安全性の検証及び見直し、避難情報の対象
区域の再調査並びに避難勧告等判断伝達マニュアルの全面改訂、防災行政無線音声到達エ
リア外で、新たに避難区域に位置付けられた自治会長への戸別受信機の配布等、ソフト面
で住民の命を守るための安全対策を重点的にすすめています。
 しかしながら、住居だけでなく避難路自体が土砂災害特別警戒区域等に入っている地域
が多数存在することが課題となっており、これらの地区には避難情報を早めに出し、立ち
退き避難を促すほか、夜間等で避難がどうしても難しいときは、近所の危険区域外の住宅
に避難させてもらう水平避難、2階建住宅の場合は、山と反対側の2階の部屋に避難する
垂直避難を促しています。
 また、ハード面では、対策工事を行うよう要望していくとともに、ソフト面では、地域
版ハザードマップの作成補助、自主防災組織の設立補助、防災避難訓練、出前講座を定期
的に行う等、災害に備える施策も併せて実施していくことで対応していこうと考えていま
す。

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*[2] 研究員コラム
* 松川杏寧 主任研究員
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 人と防災未来センターに就職してから、いろいろなところで研修や講義の講師の依頼を
受けるようになりました。対象者の方々も様々で、小中学校の子どもたちや地域の防災リ
ーダーの方々、学校の先生、障がい当事者やその支援者の方々など、講師を務めさせてい
ただくたびにこちらが勉強させていただいております。こういった講師依頼をこなしてい
く中で気にかけていることは、「ちゃんと伝えたいことは伝わっているのか」、「何か少
しでも持って帰ってもらえるようなことを盛り込めているのか」ということです。
 熊本地震によって、我々災害に関わる職務の人間が得た教訓は、2点あると感じていま
す。1点目は、いかに我が事意識を持った事前準備が大切かということ、2点目は、これ
までの災害の教訓をちゃんと伝えていくことは非常に難しいということです。この2点を
解決するために必要なのが、リスクコミュニケーションです。
 リスクコミュニケーションとは、「リスクについて関係者間で情報や意見を交換し、そ
の問題についての理解を深めたり、お互いにより良い決定ができるように合意を目指した
りするコミュニケーションをいう(応用心理学辞典 2007:564)」と定義されています。
ハザードマップなどを提示して、どれだけのリスクにさらされているのかを正確に伝える
こともリスクコミュニケーションですし、災害時の協定を結ぶための協議会を結成し、各
団体・機関がそれぞれの立場からリスクについて話し合い、自分たちには何ができるのか、
どの部分を誰が責任を持つのかを話し合うのもリスクコミュニケーションですし、避難指
示や災害の伝承もリスクコミュニケーションに含まれます。つまり直接的・間接的を問わ
ず、あるリスクについてそのリスクに関わる人たちが話し合うこと、合意形成を行うこと
を、広くリスクコミュニケーションと呼んでいます。
 先ほどの例にあげた通り、災害の各フェーズでリスクコミュニケーションは行われます。
その中で、災害が起こりつつあるときや発災後は、関係者の当事者意識が高いため、(質
の良し悪しはありますが)リスクコミュニケーションは比較的活発に行われています。災
害が起きる前、もしくは復興が進み次の災害に備えるべきフェーズでは、必要なリスクコ
ミュニケーションがなかなか行われないこともあります。より多くの人にリスクコミュニ
ケーションに参加してもらうには、災害を経験していなくても我が事意識を持ってもらえ
るような工夫が必要です。
 そして、この我が事意識を持ってもらうよう仕向けるのが、我々災害分野の研究者や、
行政の防災担当職員の責務だと考えています。研究による成果やデータを、いかに住民の
方々にわかりやすい形にするか(グラフや表、数値の出し方や地図による視覚化など)、
小中学生にはインパクトのある写真や動画を用いる、隣のまちとの比較を出してみるなど
様々な工夫を凝らして、住民や企業、関係団体が災害について我が事として考えられるよ
うに努力をしています。これをきっかけに、行政を含む関係者が顔を合わせて行うリスク
コミュニケーションの場が立ち上がり、次の災害、さらに次の災害に備えるために誰が何
をどうするのかを話し合い、協力体制が構築されるようできる限り尽力していきます。

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*[3] 研究員の活動報告
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■宇田川真之(研究主幹)
 5月末に、JVOAD(特定非営利活動法人 全国災害ボランティア支援団体ネットワーク)
による、災害対応における官と民等の連携促進にむけたフォーラム(分科会5)で、ラス
トワンマイルの救援物資の提供の意見交換が行われました。物資の市民への流通は、平常
時は民間活動によって行われている分野であり、多様な民間との取組が重要です。当日の
レポートは後日HPで公開予定です(http://jvoad.jp/forum/)

■ 高田洋介(主任研究員)
 先日、震災対策技術展のセミナーで、災害時のトイレについて講演をしてきました。受
付開始早々に満員となりまして、関心の高さがうかがえました。お話した内容は、トイレ
を整備する際に考慮する点で、1つ目はどのようにし尿を処理するのか?固形剤で固める
のか、マンホールに流すのか。2つ目は機能面での使いやすさ。足腰の弱くなった高齢者
でも使えるか?小さな子供でも使えるか?3つ目は周辺環境です。夜間でも明かりがある
か?使用後に手が洗えるか?商業ビルの管理者やマンションの自治会の方、行政の方など
様々な立場の方が聴きに来てくださりそれぞれの事情で悩んでおりました。特に公衆用の
トイレは誰でも使えるトイレになればと願っています。

■ 荒木裕子(主任研究員)
 大阪府密集市街地対策懇話会のため、門真市、守口市、守口市の各地区の取組をご案内
いただきました。ヒューマンスケールの街並みに加え、手入れされた玄関先の鉢植えなど
お住まいの方の生活が垣間見え、居心地がよく感じます。その一方でいざ地震や火災が起
きれば、家屋の倒壊や道路の閉塞など、救助・消防活動の困難さに加え、避難行動自体の
困難さも強く感じます。昨年度は神戸市の密集市街地への取組、糸魚川市の火災、また今
年に入ってからは飯田大火の復興の勉強もさせていただきましたが、街区や建物の構造的
な対策と、併せて消防や住民の方の平時からの取組の重要さを一層感じました。

■ 坪井塑太郎(主任研究員)
 「見える化」とは、学術的に確立した用語ではないものの、「可視化」とほぼ同義で用
いられ、一般的には数値データを、図や表、地図にすることで、わかりやすく認識を統一
し、さらに意思決定に資するための技法のひとつ…
 災害対応における本部での地図の利用・活用の重要性は広く認知されていますが、一方
で、日常から自分の住む地域の「社会構造」を見る機会はあまりなかったことが指摘され
ています…。もちろん、近年では各種の統計データは帳票形式でのオープンデータ化が進
んでいますが、より簡便に数値の趨勢を見ることのできる「統計ダッシュボード」のシス
テムが、今年5月に遂に総務省統計局から公開が始まりました!また、昨年秋からは、内
閣府の「まち・ひと・しごと創生本部」が運営するRESAS(地域経済分析システム)の運用
が始まり、これまで、一部の専門家の領域であった「ビッグデータ」を、個人でも無償で
利用できる環境が整い始めました。地域を正しく「見える化」することを通して、伝え、
まなぶことの大切さを強く実感すると同時に,地域のかたちからリスクを伝え,備えるた
めの方法論をしっかり検討していこうと思います!

■ 菅野 拓(主任研究員)
 熊本地震後かかわっていた、熊本市の地域防災計画の改定が終わりました。熊本市の震
災対応の反省から、避難所運営、物資、応援受援などで、大規模な変更が行われています。
ただし、仮設住宅の供与など、未だ継続しており、時間の問題から地域防災計画への反映
が間に合っていない部分もあります。今回の改定と次期改訂を注目いただければ、熊本地
震で社会的に蓄積されたノウハウの一端が見えるかと思います。

■ 中林啓修(主任研究員)
 沖縄に比べればまだマイルドに感じますが、季節の移り変わりが子供の頃よりも激しく
感じる今日この頃です。
 年度の研究計画もまとまり、先月から今月にかけて今年度の研究の下準備を進めており
ます。今年度は、昨年度に引き続き、退職自衛官の自治体防災部局への在職に関する研究、
在日米軍と国内災害救援そして、新規テーマとして先月のメルマガでも言及した作戦術の
防災への応用という3つを主な柱と考えております。短期決戦で臨める在日米軍の災害救
援の準備を先行させており、関係自治体へのヒアリングを進めておりますが、同じ米軍所
在自治体であっても、かつて所属していた沖縄県と本土自治体ではだいぶ勝手が違い、戸
惑うこともしばしばです。成果はそれこそこの盛夏をめどにまとめる予定です。

■ 松川杏寧(主任研究員)
 花冷えの春が終わって、一気に真夏のような陽気の5月でした。とはいえ、海のまち神
戸では、日差しの暑さを中和するような涼やかな風が吹いており、非常に過ごしやすい季
節になりました。もうしばらく、梅雨が来るのが遅くなってくれたらと思いながら過ごし
ています。5月という時期は、このような気候の過ごしやすさに比べて、様々な学会の論
文の〆切に追われる、災害分野に所属する研究員には地獄のような季節でもあります。こ
れを乗り切り、人防では毎年恒例の災害対策専門研修の季節がやってきました。人防に勤
めだして2年目ということで、担当させていただくコマが増えたり、研修講師のお話も増
えたりと、うれしいながらも頑張らねばと気の引き締まる思いです。

■ 本塚智貴(主任研究員)
 2017年度の特定研究で自治体の災害対策図上訓練に関する研究を始めました。昨年はい
くつかの自治体からお声掛けをいただき、訓練の設計や講評をお手伝いさせていただきま
した。今年度もすでに2自治体の訓練に参加させていただいております。全職員による災
害対応や情報共有の難しさを改めて認識する一方で、それぞれの自治体独自の対応に驚か
されています。こうした行政の方々と一緒になって研究をすすめることができるのは人と
防災センターの特色ですし、研修等を通じたネットワークのなせる技だと感じています。
また、図上訓練を計画されている、悩んでいる自治体の方がいらっしゃいましたらご一報
いただければと思います。

■ 辻岡 綾(研究員)
 今年度から「図上訓練を用いた危機対応研修に関する研究」と題して、特定研究をスタ
ートさせることもあり、広島市で実施された図上訓練の視察に伺いました。この訓練は市
の危機管理室が訓練のコントローラー役になり、各区の職員が災害対策本部運営訓練を実
施するというものです。区ごとに被害想定を変更し、現実に近い感覚で状況付与を行うも
のでした。普段、「図上訓練といえば千本ノック型の状況付与」を見ているので、新鮮だ
なぁと感じました。市独自の防災情報共有システムを取り入れておられるため、システム
操作の訓練も兼ねていましたが、操作にとまどう場面も見られました。普段から使ってい
ないとダメですね、という声も挙がっていました。訓練を通じて、その区ごとの雰囲気が
違っているのもよくわかり大変興味深い経験となりました。

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*[4]運営課からのお知らせ
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●【開催中】企画展「地震サイエンス2017~地震の観測・研究 最前線~」
 阪神・淡路大震災以降、地震の観測・研究は進歩を続けており、その成果は広く防災情
報へと応用されつつあります。この企画展では、科学の分野で関係機関がどのようなこと
に取り組んでいるのかを具体的に紹介しています。
 来館者が、はじめて見るものや、はじめて知ることを通じて、地震観測・研究の最前線
を知り、防災や減災の必要性を改めて考える契機としていただければと思います。
<期間>~平成29年7月2日(日)
<会場>西館2階 防災未来ギャラリー(有料ゾーン)

●【お知らせ】夜間ライトアップ実施中
 人と防災未来センターでは、西館の夜間ライトアップを実施しています。
 6月の点灯時間は19:00~21:00、月毎に変更するカラーテーマは「紫陽花」です。
 ご来館の際、お近くにお立ち寄りの際には、ぜひライトアップもご覧ください。

●【お知らせ】高校生の入館料が無料になりました
 平成29年4月より高校生の入館料が無料になりました。防災・減災学習の場として、
より多くの学生の皆様のご利用をお待ちしています。

●【お知らせ】毎月17日は入館料無料
 人と防災未来センターは平成29年で開館から15周年を迎えました。阪神・淡路大震
災から20年以上が経過し、記憶の風化が懸念される中、より多くの方々に震災の経験と
教訓に基づいた防災情報と「減災活動の日」への理解を深めるため、平成29年1月から、
毎月17日(休館日の場合は翌日)の入館料が無料となりました。6月の入館無料日は6
月17日(土)です。この機会を活用いただき、より多くの方のご来館をお待ちしていま
す。

問い合わせ先:阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター 観覧案内
TEL(078)262-5050/FAX(078)262-5055

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*[5]副センター長より
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 最近「忖度」という言葉をよく聞きます。でも、これまで日常生活で耳にしたことはな
いし、漢字を書ける人はほとんどいないのではないでしょうか。意味をネット検索してみ
ると、朝日新聞社のコトバンクに「(名)(スル)他人の心をおしはかること。」とあり
ました。マスコミの使用例をみてみると「公務員が忖度するのは、公平性を欠くことにな
るので悪いことだ」という文脈で使われているようです。その裏には「公務員は公明、公
正でなければならず、そのためにルール(規則)どおりにしなければならない」という暗
黙の了解があるのではないでしょうか。しかしこの「ルールどおり」が「融通がきかない」
「杓子定規」としかられ、「お役所仕事」と非難されてしまいます。ちなみに、私が公務
員になったとき、上司から「公務員の仕事はすべて法律に規定されており、それ以上でも
それ以下でもない」と指導された覚えがあります。
 ところで災害など非常事態が発生した場合、被災市町村では、想定していなかったこと
が起こり、ルールがない中で対応する必要が生じる場合が結構あります。もちろん、まず
は地域防災計画、災害対応マニュアルなどルールに従って対応するのですが、それだけで
足りることはほとんどなく、その場の状況に応じ、あるいは被災者の気持ちを忖度して対
応することが必要になります。しかし、日頃ルールどおりに進めることに慣れ、自分で考
えることをしていないと、その拠って立つルールが機能しなくなると思考停止に陥ってし
まう、動けなくなってしまうこともあるでしょう。また、被災者に公平に対応しようとし
ても、ヒト、モノが圧倒的に不足する中では優先順位を付けざるを得ません。被害の全体
像が分からない中での優先順位付けは公平なのかどうか、だれにもわかりません。
 これを防ぐために、あらゆることを想定して計画やマニュアルを作成することはそもそ
も不可能でありましょう。結局は、研修を受け、訓練をし、災害発生時に被災地に支援に
行くことなどで場数を踏むしかないのかもしれません。
 行政において、平常時はともかく、非常時においてルールがなくとも柔軟に対応するこ
とができる人材を育て、非常時に強い組織を作っていくことは、「公務員は忖度すべきで
ない」という風潮の中では大変難しい課題です。正解はないにしても、少しでも理想に近
づけるよう努力していきたいと思います。
 ところで、国会で問題になっている「忖度」、そもそも忖度は忖度する側が勝手におし
はかるから忖度なのであって、仮に忖度があったとしても、忖度した側はともかく、忖度
された側が忖度されたことをもって、忖度されるような雰囲気を作っていることが悪いと
責められても答えようがないのではと忖度してしまうのですが、いかがでしょうか。

最近のセンターの動きについて報告いたします。
1.内閣府防災から受託した防災スペシャリスト養成研修事業の嘱託研究員として、6月1
 日付で林田朋幸さんを採用しました。どうぞよろしくお願いします。
2.6月6日(火)から春期の災害対策専門研修を実施しています。
  エキスパートA 6日(火)~9日(金)
  エキスパートB 13日(火)~16日(金)
  ベーシック   20日(火)~23日(金)