◆◆阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センターメールマガジン◆◆

—————————————-◇◇◇ 2017.07.18 発行 Vol.186◇◇◇

《MS明朝・MSゴシック等のフォントでご覧下さい》

■■■■■■
■MENU■
■■■■■■

[1]防災日々雑感(第56回)
[2]研究員コラム
[3]研究員の活動報告
[4]運営課からのお知らせ
[5]副センター長より

***************************************
*[1]防災日々雑感(第56回)
*堺市危機管理室危機管理課 岩城千映子
***************************************
 このコーナーでは、自治体の防災担当職員の方が、日々取り組んでいること、感じてい
ることなどを紹介してもらいます。

 堺市危機管理室危機管理課 岩城千映子といいます。入庁から28年経ちました。税務部
を皮切りに児童福祉部局の中を転々とし、児童相談所に行った後、堺区役所の自治推進課
で自治会活動支援や防犯のお仕事をしました。その後、今の所属に配属になり今年4年目に
なります。
 今年度担当している主な仕事は、受援計画策定と地区防災計画制度の構築です。変わっ
たところでは、ドローン利活用の調査というのもやっています。もう4年目になるのにもか
かわらず、いい歳しているにもかかわらず、日々、頭を打ちながら仕事をやっています。
 人と防災未来センターへ研修に行った時のお昼ごはんはJICAランチが多いです。初
めて行ったときの国際色豊かな献立には感動しました。そこから研修といえばJICAラ
ンチというくらい、よく食べに行きます。

*人と人とのつながりが大切と痛感しました*
 危機管理室に着任して一番感じたのは人と人のつながりが大切でということです。
 地域の方とともに、地域の避難所運営マニュアルや防災活動計画策定の取組をしている
ところですが、地域コミュニティが成り立っているところでは、助け合いの精神が見られ、
取り組みがスムーズに進む傾向にあります。
 また、これは、フォローアップ研修でもお話させていただいたのですが、指定都市市長
会の枠組みで熊本地震の被災地支援に行ったとき、現地の情報を取るために熊本市役所内
にある指定都市市長会現地対策本部を訪ねたのですが、ずいぶん心細い思いで入った部屋
に、人と防災未来センターの災害対策専門研修をいっしょに受けた方が座っていて、ほっ
として大声で歓声を上げたのを覚えています。
 その人から、「○○市の○○さんも、△△市の△△さんもいるよ。」と教えてもらい一
気に安心感が増しました。この後、今の支援の状況や災害対策本部の動きを一通り教えて
もらえ、ここから動き方が変わりました。災害対策専門研修を受けてよかったと心から思
いました。

*どこかでお会いしたときは、ぜひお声をかけてください*
 私は、スマートフォンを使いこなせず、LINEなどのSNSは不得意なので、反応が
なくても許してください。文字通り「顔の見える関係」で人とのつながりを実践していま
す。研修や出張先など、どこかでお会いして、JICAランチの意見交換(あ、仕事の意
見交換もお願いします(^^ゞ)ができることを楽しみにしています。あー、あのメルマガコ
ラムに載ってたばばぁだわ。と思っていただけると嬉しいです。

今後もどうぞよろしくお願いいたします。

*********************************
*[2] 研究員コラム
* 多様な主体による災害対応の肝
* 菅野拓 主任研究員
*********************************
 法律面からみれば日本の災害対応の主な担い手は、ずっと行政です。しかし、東日本大
震災のような巨大災害を行政だけで乗り越えることは難しいです。例えば、阪神・淡路大
震災が起きた1995年は「ボランティア元年」と呼ばれ、様々に活動するボランティアとい
う存在を社会が認識せざるを得なくなりました。それを受け、劇的に変化したのは、民間
の非営利・共益的な組織(以下、NPO)の状況でした。1998年には特定非営利活動促進法
で成立したNPO法人、2006年の公益法人制度改革関連3法で成立した一般法人や公益法人
など、行政の許認可を伴わずに設立可能な非営利の法人格が整備されていきました。同時
に、福祉やまちづくりの領域で地域の課題を解決したり、フェアトレードや市民協働など
新たな価値や仕組みづくりに取り組んだりと、NPOの活動が広がりを見せました。行政だ
けが公的な問題を扱う唯一の主体という時代ではなくなっていました。
 そのような状況のなか、東日本大震災では当然のように、NPOも災害対応を行いました。
復興支援活動を行ったNPOはアンケートでリストアップできただけでも1,420団体にのぼ
り、その活動は多様で柔軟、復興支援活動への資金支出は3年間で少なくても1,200億円
程度と推計され、大半は民間資金でした 。このように、行政だけが災害対応を行う時代
から、NPOなどの多様な主体も災害対応にあたり、復興やその後の地域づくりに連続的に
参画していく時代となりました。
 復興や地域づくりをしていく行政やNPOなどの多様な主体にとって、このような時代の
変化によって、頭を悩ますことがおきます。それは情報の不明瞭さです。例えば、行政か
ら見ると、被災地に対してなんらかの活動を行う際、その活動が、被災者や被災地にとっ
て効果的なのかが問われます。ただし、必ずしも行政が被災者や被災地にまつわる情報を
十分に持っているわけではありません。被災者に密着して活動するNPOの方が情報を持っ
ているということがよくあり、しかも、行政が想定している活動は、そのNPOから見れば
効果的ではないかもしれない。または、行政が行おうと思っている活動を、すでにNPOが
先行的に実施しており、行政が実施するよりも、そのNPOに頼んで実施してもらう方が効
果的かもしれません。
 ただし、どのNPOがそういった情報を持っていたり、活動したりしているかが、行政か
ら見るとわかりません。昔ならば、少ない情報のなかで、その情報にそった活動をすれば
よかったのですが、多様な主体が活躍する現在、被災者や被災地にまつわる情報量はぐっ
と増え、容易につかめなくなりました。NPOなどの多様な主体自体の情報もつかみにくい
です。効果的に活動しようとすると、情報の不明瞭さと対峙することになります。この不
明瞭さは行政だけではなく復興支援活動や地域づくりに資する活動を行おうとするNPOで
も同様に感じられます。
 情報の不明瞭さに対峙するために、被災者や被災地にまつわる情報やNPOなどの多様な
主体の情報が集まる場や、その情報を持っているとみなされる交渉役が必要となります。
東日本大震災以降の災害で、この必要性に応えているのが「ネットワーク体」と呼ばれる
多様な主体が参画する協議体や、NPOの「中間支援組織」です。ネットワーク体や中間支
援組織は情報のハブとなる存在です。行政やNPOなど復興にかかわる主体はそこを通じて、
新鮮かつ信頼に足る情報を得られます。その情報でもって、活動の漏れ・ダブり・非効率
などを是正し、活動の目標を調整します。その状況を、再びネットワーク体や中間支援組
織にフィードバックし、さらなる調整が行われます。こういったことを繰り返すなかで、
ひいては地域の将来像を組織間で共有し、多様な主体による復興や地域づくりを成し遂げ
ていくことにつながります。
 おそらく、ネットワーク体や中間支援組織の役割は、災害時だけに必要なものではあり
ません。東日本大震災においては、普段の社会の脆弱性が可視化され、さらには、その延
長線上にある新たな問題が続出することに対し、多様な主体が応えてきました。この事実
は、普段の社会にも見えにくいものの様々な問題があり、そこでも多様な主体が活躍する
領域があるということでもあります。情報の不明瞭さに応じ、参画する多様な主体の間の
信頼を紡ぎ、様々な問題に協働して向かっていける状況を、普段の社会の中につくってい
く。こういった取組にも、ネットワーク体や中間支援組織は重要な役割を果たしていくと
考えられます。

**************************
*[3]研究員の活動報告
**************************
■宇田川真之 研究主幹
 6月いくつかの救援物資に関する検討会にお伺いをいたしました。
(http://www.pref.okayama.jp/site/presssystem/516519.html) 熊本地震以降、多く
の府県や政令市などで、救援物資の調達および輸配送に係わる民間事業者・団体と行政と
の協議会が開催されるようになっています。地域特性や想定する災害規模等に応じて、優
先される検討テーマには様々です(広域拠点の運営マニュアル、避難所までのラストワン
マイル、関係機関間の情報連絡、プッシュ物資の配分計画など)後日、全国的な動向など
を整理し研修等で参考情報としてご提供したいと思っております。

■高田洋介 主任研究員
 現在、各自治体が出している南海トラフ地震の被害想定をもとに、医療の需給バランス
の試算に取り組んでいます。自治体は内閣府が示した被害想定手法に基づき、それぞれの
地域の実情に合わせた被害想定を出しており、人的被害では負傷者数とその内訳の重傷者
数を示しております。内閣府によりますと重傷者等の定義は「災害のため負傷し、医師の
治療を受けまたは受ける必要があるもののうち、「重傷者」とは1月以上の治療を要する
見込みの者とし、「軽症者」とは、1月未満で治療できる見込みの者とする」とあります。
しかし、医療を提供する立場から言えば、重傷者の中には、命に関わる重篤なケースから、
重症だが、命に別状はないケースまであり、軽症者の中には1月未満で治療が終わるが、
2週間くらいの入院が必要な中等症のケースもあるのが、実際だと考えます。つまり、現
手法で想定されている負傷者数では、実効的な医療対応を検討するうえで不適切な数値だ
と考えます。再試算の結果がまとまりましたら、またお知らせしたいと思います。

■菅野拓 主任研究員
 ここ数か月、東日本大震災におけるNPOのキーマンに連続的にインタビューしています。
よく言えば人と違う人、悪く言えば変人が多く、こういう人が社会を変えていくのだなと
実感できます。日本は外圧・戦争・災害などで社会の形を変えてきた国だと思いますが、
まるで、明治維新における坂本竜馬のように、そういうタイミングでは、積み上げられた
官僚機構よりも、人ひとりの役割が意味を持ちやすいのだなと思えます。

■坪井塑太郎 主任研究員
 映画監督、廣木隆一の作品は、少女漫画の世界のようなポップな恋愛作品もある一方で、
行き止まりの想い、見えない社会の壁と閉塞感、答えの出ない今を踏みしめて進む人々を
描く作品も多い。東日本大震災後の2015年に撮影・公開された映画「さよなら歌舞伎町」
や、今月から公開が始まる映画「彼女の人生は間違いじゃない」の中で語られるフクシマ
の「今」を生きるという視点は、同県郡山市出身の彼ならではのメッセージなんだと思う。
 あの大震災から時間を経る中で、次代を担う、中学生・高校生や大学生に対し、改めて
地域の変化、対応をどのように伝え、学ぶのかということが現実の問題として課題に上が
り始めています。阪神・淡路大震災から22年、中越沖地震から10年、東日本大震災から6
年、そして熊本地震から1年…時間の経過は時に、少し荒れた心を平滑にしてくれるけれ
ど、今一度、自分の足でしっかり立ち止まり、知識から知恵に、知恵から教訓と発信につ
なげられるようしっかりていねいに頑張ろうと思う。

■荒木裕子 主任研究員
 災害対応のワークショップでは2次災害の想定を入れることがありますが、昨年の6月
は益城町役場で支援活動を行っている中、豪雨による大規模な浸水被害が発生しました。
ちょうど1年後のこの6月に南阿蘇村、益城町の復旧・復興の取組を見てまいりました。
その時点ではまだまとまった雨が降っていなかったのですが、南阿蘇のある地区では山の
斜面に昨年の地震と大雨による岩や倒木が滞留しており、住民の方も住宅を再建するにも
土砂災害の発生を大変懸念されていました。砂防堰堤の計画はありますが、この雨季に間
に合うはずもなく、地区内の住民の方同士で早期の避難行動の重要性を確認しておられま
した。またその一方で、日中はもとのお住まいの地区の作業小屋等を使い農作業等をされ、
夜は仮設住宅に戻られるなど、これまでとは違う住まい方の可能性も見られています。生
活と地域再建を行うなかで、より安全な暮らしになるよう柔軟な取り組みが行われること
が重要かと思います。

■中林啓修 主任研究員 
 まずは、今般の九州北部豪雨災害で犠牲になられた方、被害に遭われた方に心よりお見
舞い申し上げます。今回被害が多かった自治体の一つである朝倉は母方の祖父の故郷でも
あり、決して人ごとと思えぬ心持ちでおります。救援活動に奔走されている皆様にも心よ
り御礼申し上げます。
 先月から今月にかけては、昨年度からの継続テーマである在日米軍と国内災害救援につ
いて、米軍施設所在自治体の中で唯一、東日本大震災でも大きな被害を被った八戸市への
ヒアリング調査および、これを踏まえた米軍施設所在自治体への郵送アンケート調査に着
手しました。今夏までに成果をまとめていく予定です。

■松川杏寧 主任研究員 
 6月は毎年2回恒例の、災害対応研修専門研究の月でした。初めて講義を1コマ担当さ
せていただき、非常に勉強になりました。そして7月に入り、九州北部の豪雨災害で、今
年度初めての人防現地支援が行われました。災害の多い日本で、災害による被害が全く起
きないことはあり得ないとはわかっているものの、起きるたびにつらい気持ちになります。
改めて、日々そなえておくことの重要性を痛感し、研修や講演などでの啓発をより進めな
ければと気を引き締めました。

■本塚智貴 主任研究員
 6月は本センターで実施している自治体職員向けの災害対策専門家研修EA、EB、Baの3
コースが週替わりでありました。今回、私は春のEAコースを担当させていただきました。
受講生の中には昨年度の秋に私が対応したEBコースを受講された方が多く、同窓会のよう
な雰囲気で研修をすすめることができました。秋のEBコースではコースの最終日に鳥取県
中部地震が発生し、ふりかえりをする機会がなくバタバタと終了してしまったのが心残り
でしたが、今回はふりかえりまで無事に終えることができました。研修での気づきを共有
することで、新たな発見や課題に気づくことができます。訓練などでもそうですが、多く
の方の様々な視点から評価し、それを共有する機会が重要だと改めて感じました。

■辻岡綾 研究員
 6月に本センターの災害対策専門研修が実施され、ベーシック研修の担当をさせて頂き
ました。今回のベーシック研修は女性の参加者が通常より多かったことが印象的でした。
防災部局は圧倒的に男性職員が多いですが、これからは女性職員も積極的に防災に関わる
機会を持って頂きたいと思います。研修の中で男女共同参画に関しての講義も実施して頂
きましたが、地域防災計画や避難所運営マニュアル等の中にも、ぜひ女性目線での災害対
応を取り入れる機会となって頂けるなら嬉しく思います。

****************************
*[4]運営課からのお知らせ
****************************
●【新規】「夏休み防災未来学校2017」を開催
 7月22日(土)から8月31日(木)まで「夏休み防災未来学校2017」を開催し
ます。例年、夏休み期間中に開催するこの催しでは、子どもから大人まで楽しみながら防
災・減災について学ぶことができるプログラムを多数用意しています。プログラムの詳細
及び参加申込方法についてはWEB(http://hitobou.com/event/summer/)をご確認くだ
さい。皆様のご参加をお待ちしています。
 <開催期間>平成29年7月22日(土)~8月31日(木)
<会  場>西館2階防災未来ギャラリー(有料ゾーン)ほか

●【お知らせ】夜間ライトアップ実施中
 人と防災未来センターでは、西館の夜間ライトアップを実施しています。
 7月の点灯時間は19:00~21:00、月毎に変更するカラーテーマは「夏の訪れ」です。
 ご来館の際、お近くにお立ち寄りの際には、ぜひライトアップもご覧ください。

●【お知らせ】高校生の入館料が無料になりました
 平成29年4月より高校生の入館料が無料になりました。防災・減災学習の場として、
より多くの学生の皆様のご利用をお待ちしています。
 <入館料金>大人:600円、大学生:450円、高校生以下無料
       ※障がい者、70歳以上の高齢者は証明書提示で割引有

●【お知らせ】毎月17日は入館料無料
 人と防災未来センターは平成29年で開館から15周年を迎えました。阪神・淡路大震
災から20年以上が経過し、記憶の風化が懸念される中、より多くの方々に震災の経験と
教訓に基づいた防災情報と「減災活動の日」への理解を深めるため、平成29年1月から、
毎月17日(休館日の場合は翌日)の入館料を無料としました。7月の無料観覧日は7月
17日(月祝)です。この機会を活用いただき、より多くの方のご来館をお待ちしていま
す。

問い合わせ先:阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター 観覧案内
TEL(078)262-5050/FAX(078)262-5055

************************
*[5]副センター長より
************************
 7月5日からの梅雨前線による大雨は福岡県と大分県に甚大な被害をもたらしました。
このコラムを書いている時点(13日)でも連絡が取れない方や行方不明の方があり、か
なりの家屋被害があることも明らかになってきました。亡くなられた方々のご冥福をお祈
りいたしますとともに、被害にあわれた方々にお見舞い申し上げます。また、被災自治体
の皆様はじめ現地で活動されている方々にはご健闘を祈念しますとともに、ご自身の安全、
健康にも十分留意願いたいと思います。
 人と防災未来センターとしては研究員を2回現地に派遣し、情報収集を行いました、
1)7日に、宇田川研究主幹を派遣、福岡県庁及び大分県庁を訪問
2)9日から11日まで、荒木主任研究員、本塚主任研究員及び辻岡研究員を派遣、福岡
  県庁の他、朝倉市、東峰村、大分県日田市等被災自治体を訪問
今後は、被災自治体で相応の対応がなされていること、県や近隣市町村からの支援が行わ
れていること等から、神戸においてメール、電話等により情報提供や問合せ対応等の支援
を行いつつ、被災地の状況を注視して適時適切な対応をすることとしています。
 人と防災未来センターでは災害対応のお問合せ、被災地支援の要請等に対応してまいり
ます。ご遠慮なくご連絡いただければと思います。
 今後とも梅雨前線や台風による大雨が予想されます。引き続き緊張感をもって対応して
いきたいと思います。
                                    白石秀俊
センターの運営に関するご意見、ご要望は副センター長〈goiken@dri.ne.jp〉まで。