防災教育開発機構

教訓継承へ地域タッグ (H20.9.4付け讀賣新聞朝刊から)


  子供たちへの防災教育が根付かない現状を打ち破ろうと、研究、教育、行政機関が一丸となって取り組む地域が増えている。阪神大震災を経験した神戸では、より高いレベルの防災教育を実現させるために設立されたのが「防災教育開発機構」だ。これが中心となって各地で様々なプロジェクトが試行されている。

 文部科学省は昨年4月、防災教育支援に関する懇談会(座長、林春男・京都大防災研究所教授、11人)を設置。懇談会は中間報告で、研究者や学校、地域の橋渡しをするつなぎ手不足を指摘し、新たな枠組みづくりの必要性を示した。これを受けて、文科省は今年度から、地域一体型の取り組みをサポートする防災教育支援モデル地域事業をスタートさせ、防災教育開発機構のほか、津波対策を進める岩手県釜石市、高潮や洪水対策に取り組む山口大を中心にしたグループなどが選ばれた。
 神戸では震災以降、様々な機関が独自の取り組みを進めてきた。兵庫県教委は、避難所運営や心のケアの知識を持つ教職員を集めて震災・学校支援チーム(EARTH)を組織。神戸市教委や市消防局は、命の大切さを実感できる小学校向けプログラムの開発などを進めてきた。こうしたノウハウを持ち寄り、さらに優れた教材やプログラムの開発を目指して誕生したのが防災教育開発機構だ。人と防災未来センターが中心となり、県教委、市教委、神戸学院大や全国でただ一つの防災学科を持つ県立舞子高の5団体が結集して5月に設立した。県防災企画局や市危機管理室、市消防局、神戸海洋気象台なども協力する。
 同機構は、教材などの開発のほか、若い世代向けの新たな企画も試行する。機構設立に尽力した同センターの山本健一・副センター長は「兵庫県で、防災教育のためにこれだけの機関が連携するのは初めて。大きな相乗効果を期待している」と話す。(高橋淳夫=人と防災未来センター研究調査員)

* 讀賣新聞社の許可を得て掲載しています。