リレーエッセイ 2014

第4回

「“官”と“民”をつなぐ中間支援組織」

 地方公務員の私が防災を研究するきっかけとなったのは阪神・淡路大震災であり、行政対応に限界を感じるなかでボランティアやNPO等の役割に関心を持った。
 あの震災から20年が経ち、民間セクターによる災害対応が定着した。東日本大震災による福島第一原発事故の影響を受け、今なお12万人余りもの避難者が全国各地に点在するが、「ふくしま連携復興センター」「愛知県被災者支援センター」「東日本大震災支援全国ネットワーク」いった中間支援組織が、福島県内、県外、全国レベルで支援を展開している。
 上記3組織とも多様な支援者が集まり相乗効果を生み出すことで、「ネットワーク力」「アウトリーチ」「専門性」といった特色を発揮しており、“官”との関係では、対峙よりも連携を重視する。「愛知県被災者支援センター」は公設民営で、自治体から民間にアプローチする動きも見られる。
 一方、財源確保は依然“民”の課題である。しかし、これも復興基金といった準公的資金を活用し中間支援組織を支援する方策が編み出されている。その持続性を確保する環境づくりが必要である。


2014.12
兵庫県立大学 青田良介
(ペンを神戸学院大学 松山雅洋さんにまわします)

第3回

「災対法改正の意義」

 東日本大震災後に、災対法が2度の大きな改正を遂げました。その中で、「基本的人権」ならびに「民主主義」といった憲法理念が読み取れる条項が見受けられています。
 前者としては、2条の2において基本理念規定が新設され、人の生命・身体の保護の最優先(4号)、被災者の年齢・性別・障害等への配慮(5号)、迅速な被災者援護(6号)が求められるようになりました。
 後者としては、地域防災会議の委員として「自主防災組織を構成する者」が追加され、防災会議に地域の意見が反映されるような仕組みができ(15条5項8号、16条6項)、「地区防災計画」の規定が新設され、地区居住者等のもう再訓練や災害発生時の相互支援に関する計画が策定できるようになりました(42条3項)。  今回の法改正により、「行政の行政による行政のための基本法」から「国民の国民による国民のための基本法」への転換が図られたと評価できると思います。


2014.09.19
関西大学社会安全学部 准教授 山崎栄一
(ペンを兵庫県立大学 青田良介さんへまわします)

第2回

「災害リスクの理解と防災リテラシー」

 東日本大震災後の復興過程では、いろいろな地域で、防潮堤の高さが議論されています。そして、これまでにない動きが出てきています。例えば、先日の災害対応研究会では、大槌町の碇川町長が、湾内で異なる防潮堤の高さを地域ごとに選択して復旧が進んでいるということを話していらっしゃったのですが、これまでの国の防災行政からすると、非常に世の中が大きく変化しているのだということを痛感しながらお聞きしました。同じ湾内で高さの異なる防潮堤の計画を国や県が認めたということは画期的なことです。同じようなことは大船渡市吉浜の本郷でもあり、ここは各世帯による投票で最終的な決定をしたということで、その意思決定の手法の点でも画期的だと思います。
 津波にあった地域が、「防潮堤は低くてもよい」という選択をすることは、それなりの覚悟が伴います。しかし、これからは、そのリスクを理解して、自らその対応策を選択するという時代になったわけです。そのことから考えると、防災のリスクを正確に一般の人たちに理解してもらうための説明の仕方が重要になりますし、説明を受ける方々が、それらを理解できるだけのリテラシーを持っていることが今後ますます重要になってくると思います。

(大槌町の壊れた防潮堤と背後のまち 2012.9.8)


2014.05.30
明石工業高等専門学校 太田 敏一
(ペンを関西大学 山崎栄一さんにまわします)

第1回

「低頻度事象である災害の教訓をどのように伝えていくか」

 最近、一般の方々に講演するときに「これからは『健康問題』くらいの気持ちで『災害問題』への危機感を持ってください」と言っています。「これまで丈夫な体だったからといって、未来永劫、丈夫な体ではないのだから体調管理する」のと同じように、「今までは無事だったけれども、ずっと同じ調子で自然が自分の目の前に現れるわけではないので、日頃から危機管理する」ように人々の意識を変えていくことができればと思っています。そのためには「わがこと意識」を持つことが大切です。「自分たちに身近なこととして、自分たちに引き付けて考えること」です。
 東日本大震災から3年。一般の人々からは「そろそろ災害の話は飽きたし勘弁してくれ」という言葉も聞かれます。人間の時間感覚で「3年=もう終わった」というわけです。しかし大地の活動は、この瞬間も活発に続いているのです。平時においていかに長期にわたって「防災の知恵」を伝えていくことができるか。仕組みとしての防災教育のあり方に頭を悩ませています。


2014.02.21
兵庫県立大学 木村 玲欧
(ペンを明石工業高等専門学校・太田敏一さんへまわします)