震災資料語り〜ものがたり〜

No.12

投稿日:2017.11.09(木)

重いポリ容器を持って、彼の家まで120km。
二人の絆を結んだ水は、今も保管しています。

  • 資料画像0

ポリ容器(三重県津市から運ばれた水)

資料番号:341-002001

寄贈者:加賀尾宏一氏

このポリ容器(灯油缶)は、震災当時、三重県在住の女性が被災地にいた友人の男性に水を届けるために使ったものです。震災4日目の1月21日、自宅から西宮まで約120kmの距離を、女性はポリ容器と共に移動しました。あわせて寄贈された手記には、電車を乗り継ぎ、徒歩で男性の家へ向かう様子に加え、道中に出会った人との会話や、被災地での助けあいの様子が記されています。

これを機に、ふたりはご結婚。2003年に祖父母の家でポリ容器を見つけたお子さんが、祖父から保管されていた経緯を聞くという場面も描かれています。

水は震災当時に使われることなく、「今後の備えに」と、ずっとご実家に保管されてきました。その後、当センターに寄贈され、今もこの容器の中いっぱいに入っています。

関連情報

水を受け取った男性の家は西宮市六軒町にありました。この地域を含む西宮市南部は震災によって全域が断水、応急復旧が完了したのは平成7年(1995年)2月末です。その間、市内の小中学校やなどで給水車による応急給水が行われました。ピークの2月9日には給水車156台が活動しています。その後上水道の復旧に伴って給水活動は徐々に減少し、3月7日で応急給水は完了しました。

震災のときには、それまでにはなかった付き合いが生まれたり、既存の縁が強くなったりすることがあります。そうした加賀尾夫妻のような所謂「震災カップル」の事例はいくつかあります。例えば、被災地でのボランティア活動で知り合ったカップルの結婚祝賀会で配布されたメッセージ集も、センターに寄贈されています。また少し意外なところでは、自宅が全壊した80代の男性が、多可郡の養護老人ホームに入居して知り合った同じく80代の女性と結婚した例もあります。

センターの所蔵資料には、被災地で行われた結婚式の写真もいくつかあります。2月11日の日付が入っている中山手カトリック教会での写真には、笑顔の新郎新婦の後ろに重機が写り込んでいます。焼失したカトリック鷹取教会では、屋外にテントを張って結婚式を行いました。悲劇の中でも、希望をもって新しい生活を始める被災者の姿を見て取ることができます。

  • 関連画像0
  • 関連画像1