センター長あいさつ
人と防災未来センター長 河田 惠昭
[関西大学理事・社会安全研究センター長・教授]
当センターは、災害対策専門職員の育成、実践的な防災研究と若手防災専門家の育成、災害対応の現地調査・支援、交流・ネットワーク、展示、資料収集・保存といった6つの機能を備えています。これらのなかでも、特に「災害対策専門研修」を、災害に関する実践的な人材育成の一環として、重点的に推進しています。
この研修は、センターがオープンした平成14年度から実施しており、カリキュラムや講義内容については、受講生へのアンケートに基づき不断に見直しを行っており、高い評価をいただいています。
地震や集中豪雨、台風などの災害に備え、防災関係職員が必要な知識・技術を習得しておくことは極めて重要です。また、南海トラフ巨大地震や首都直下地震といった国難ともなりうる巨大災害の発生が懸念されています。これらの災害に対処するためには、自然災害による被害をできるだけ小さくし、復旧に係る時間もできるだけ短くする縮災社会(Resilient Society)を実現しなければなりません。そのための人材育成も喫緊の課題です。
この研修は、センターの研究員が実践的・総合的な研修として企画・運営し、講師も第一線でご活躍されている方にお願いしております。また、受講者の知識やレベルに応じて無理なくステップアップできるよう工夫しており、必ずや、関係者のご期待にそえるものと自負しておりますので、ぜひとも多くの方々に受講いただきますようご案内いたします。
内閣府からのご推薦
内閣府政策統括官(防災担当)髙橋 謙司
我が国は、その地理的、地形的、気象的な特性から、これまで様々な自然災害に見舞われ、その都度多くの人的・物的被害を被ってきました。特に、平成23年の東日本大震災は未曾有の被害をもたらし、我が国の防災対策に大きな教訓を残しました。令和6年能登半島地震でも、多くの人命が失われ、多数の家屋が被害を受けるほか、土砂災害や道路、港湾などのインフラへの被害や水道をはじめとするライフライン等に甚大な被害が発生しました。
災害の経験と教訓を風化させることなく、後世へ着実に継承するとともに、今後発生が懸念される首都直下地震や南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震や、激甚化・頻発化する豪雨災害等の大規模災害への備えを充実していくことが重要であると考えています。
こうしたことから、政府においては、各種法令や防災基本計画の見直しを行うほか、中央防災会議防災対策実行会議の下に各種ワーキンググループを設置し、防災対策の検討を行うなどの対策を進めています。
これら防災対策を実行するにあたっては、業務に直接携わる地方自治体の担当職員の能力向上、人材の育成は最重要課題であり、これを積極的に推進していく必要があると考えております。人と防災未来センターが行う「災害対策専門研修」は、最新の防災研究成果を踏まえたカリキュラムにより実践的・体系的に知識や能力を身に付けることができるものとして、地方自治体の防災担当者など、毎年全国各地から多くの方々が受講されております。このような研修を積極的に活用することにより、防災担当者の能力の向上はもとより、組織全体の災害対応力の向上に努めていただきたいと考えております。
消防庁からのご推薦
総務省消防庁次長 五味 裕一
平成7年の阪神・淡路大震災、平成23年の東日本大震災に加え、令和6年は能登半島地震が発生するなど、わが国では多くの大地震が発生し、甚大な被害をもたらしてきました。近い将来には、南海トラフ地震や首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震等の大規模地震災害の発生も懸念されています。
また、気候変動の影響により風水害も激甚化・頻発化しており、令和5年も線状降水帯による大雨などにより多くの被害が生じました。これらの自然災害に備え、各機関においてより一層の防災・危機管理体制の強化が求められています。
消防庁としても、各地方公共団体が災害対応の各段階に応じて万全の対応を行うことができるよう支援を行っています。ハード面では、庁舎の耐震化や、非常用電源の整備等に対して地方財政措置を講じているほか、緊急消防援助隊の車両・資機材の整備等に取り組んでいます。
ソフト面では、市町村長に対する災害対応シミュレーション訓練やトップセミナーを実施するほか、防災訓練の実施や業務継続計画の策定を促進しています。また、地域防災力の中核となる消防団や自主防災組織等の充実強化を支援しています。
そして、各地域において、住民と協力しながら防災・危機管理を担うのは地方公共団体の皆様です。そのために、首長等幹部職員及び防災担当職員の危機管理能力の向上が必要不可欠です。
人と防災未来センターで開講される「災害対策専門研修」では、地方公共団体の職員を対象に、専門家による高度な研修が行われています。この研修に多くの方々が積極的に参加していただき、災害対策についての見識を高めていただくとともに、地方公共団体間のネットワークを構築することにより、我が国の防災・危機管理体制がより一層充実されるよう期待しております。